発達障害の可能性のある児童生徒等に対する
教科指導法研究事業

④算数・数学における「志導」に関する教授法(1)

★ 対象とした学習上のつまずくポイント1(A 数と計算)

 「ものとものとを対応させることによって、ものの個数を比べること」について、数を正しく数える(計数)ためには、以下に示す5つの原理を理解する必要がある。

  • ● 一対一対応:1つのモノに数の名前を1つだけ割り当てるという原理
  • ● 安定した順序:用いられる数詞が常に同じ順序で配列される原理
  • ● 基数性:最後の数が集合の数の大きさを示すという原理
  • ● 順序無関連:数える順序は関係がないという原理
  • ● 抽象性:数えるものがなんであろうと全く関係がないという原理

 このうち、継次処理型学習者は、一対一対応と安定した順序の理解は容易だが、基数性の理解につまずきが生じやすい。一方、同時処理型学習者は、基数性・順序無関連・抽象性の理解は容易だが、安定した順序の理解につまずきが生じやすい。

★ 上記に対する取組内容1(A 数と計算)

 数概念を獲得するためには、図7に示す三項関係の理解が重要になる。その上で、一対一対応、安定した順序、基数性、順序無関連、抽象性を学習することで正確に計数できるようになる。この際、数対象が具体物であれ半具体物(数図ブロック)であれ、一つの数対象に、一つの数字・数詞を割り当てる練習をする必要があり、図8に示すように、具体物と半具体物を同じ数字パネルに、一つの数詞を言いながら、対応する数字のパネルに置いて理解を促す。継次処理型学習者の場合は、特に数詞を強調しながら、同時処理型学習者の場合には、特に数字を強調しながら、児童生徒に関わる。この方法により、一対一対応、安定した順序が習得できるとともに、最後に唱えた数詞・数対象が置かれた数字が集合数であること(基数性)の理解につながる。

図7 三項関係
図8 教材の工夫